はじめに

RoamSwitch の全体像

守りの層(検知・遮断・隔離・監査)と、製品ごとの役割、外へデータを送らない設計を学び、自分の環境で動かせるかを確かめます。

  • レベル: 入門
  • 約25分
  • 2026-11-03

#RoamSwitch が守るもの

RoamSwitch は、Mac と Linux のマシンを攻撃から守る製品です。守る対象は、ランサムウェア、認証情報の盗難、不審なプログラムの実行、ネットワークからの攻撃、サプライチェーン、AI エージェントなどに分けて、章ごとに整理しています。全体の一覧は 機能一覧 で見られます。

この教材では、それぞれの機能を題材に、次の順で学びます。

  1. 攻撃がどう成り立つかを知る
  2. 無害なデータで、同じ状況を作る
  3. RoamSwitch が何を見つけるかを、実際の出力で確かめる
  4. 何が見えないかを知る
読み方

どのモジュールも、4 の「見えない部分」まで読んでください。何を見ていないかが分かって、はじめて守りを組み立てられます。

#7つの動作と、版ごとの役割

機能は、動作で分けると 7 種類です。1 つの機能が、複数の動作を持つこともあります。

動作意味
検知異常を見つけて知らせる
遮断通信や実行を止める
隔離疑わしいファイルやマシンを、ほかから切り離す
監査設定や状態を点検して、弱いところを示す
記録後から調べられるように、事実を残す
報告結果をまとめて伝える
制御設定やサービスを、決めたとおりに保つ

守る対象に合わせて、版が分かれています。

版守る対象
MacMac の端末
Linux ClientLinux のデスクトップ
Linux Server動かし続けるサーバー(動作中のプログラムの監視、ファイルの改ざん検知、SSH の保護など)
SensorLAN の状態を、ネットワークの側から調べる

一緒に入るアプリもあります。AccessScope はアクセスログの診断に、PathScope は権限昇格の経路の分析に使います。

通知だけの機能と、自動で止める機能

同じ「検知」でも、知らせるだけの機能と、自動で対処する機能があります。どちらなのかは、機能一覧の「検知したときの動き」で確かめられます。自動で止める機能は、誤検知のときの影響が大きいので、初めからオンのものと、自分で選んでオンにするものに分かれています。

#外へデータを送らない設計

RoamSwitch は、利用者のデータを外へ送りません。通信があるのは、脅威データを受け取るときだけです。

  • 署名つきの更新データ(脆弱性の対応表、脅威の一覧、検知ルール)を、定期的に(多くは 1 日 1 回)受け取るだけです。送るのは受け取るための要求だけで、利用者を区別する識別子は付けません
  • 受け取ったデータは、署名と内容の検査を通ったものだけを使います
  • 更新を受け取る部品以外は、通信する部品そのものを持たない設計で、開発時の自動検査(CI)で確かめています

読み取りだけの点検コマンドの多くは、実行しても通信しません。そのコマンドの説明(roamswitch help)には「通信なし」と書いてあります。

#自分の環境で動かせるかを確かめる

動かせる状態かを確かめる

RoamSwitch には、RoamSwitch 自身の点検(doctor) という点検コマンドがあります。何も変更せずに、このマシンで RoamSwitch が動く条件がそろっているかを調べます。管理者権限で実行すると、すべてを確認できます。

sudo roamswitch doctor

次は、管理者権限なしで実行した例の抜粋です(Server Edition、Ubuntu 26.04)。

実行結果
[注意] root ではないため、root だけが読める状態は確認できません。sudo roamswitch doctor で実行すると、すべて確認できます
[正常] nft: /usr/sbin/nft
[正常] systemctl: /usr/bin/systemctl
[注意] clamscan が見つかりません。一部の機能が使えません
[正常] RoamSwitch のデーモンが動いています
[注意] ufw も動いていて、ファイアウォールの規則を書き換えます。RoamSwitch の規則と重なることがあります
[正常] 署名つきデータの更新は動いています。最後の成功: 2026-11-02 11:35 UTC

失敗はありません(注意 5 件)

出力は、次のように読みます。

  • 正常: 条件がそろっています
  • 注意: 動きますが、知っておきたいことがあります。上の例では、別のファイアウォール(ufw)も動いていて、規則が重なる可能性を示しています
  • 失敗: 動かせない理由があります。終了コードが 1 になるので、スクリプトからも判定できます

#「見えない部分」を読む

RoamSwitch は、攻撃の手法(MITRE ATT&CK)ごとに、自分が何を見ていて、何を見ていないかを書き出せます。

検知の範囲を自己点検する
roamswitch detection-coverage --server | head -12
出力の抜粋
🧭 検知の範囲の自己点検 (MITRE ATT&CK) (Server Edition)

38件中: 検知 0 / 一部 25 / 見ていない 13。対応するガードが止まっている項目: 0

🟡 T1685 Disable or Modify Tools  [一部]  稼働中
    担当: ebpfHeartbeat, criticalPathFim
    見えない部分: 確認するのは Falco の警報の経路だけで、Falco のユニットが動いているときに限ります。(以下略)

⬜ T1686 Disable or Modify System Firewall  [見ていない]  -
    見えない部分: フラッシュされても、デーモンは自分のテーブルを30秒ほどで作り直しますが、それは自分のルールの自己修復です。ホストのファイアウォールの変更は見ておらず、知らせもしません。

数字は版によって変わります。見てほしいのは、「検知 0」の部分です。この出力は、どの手法についても「完全に検知できる」とは書いていません。 見えない部分を、製品自身が言葉にして示します。

見えない部分

このモジュールでは、次のことは確かめていません。

  • 管理者権限を持つ攻撃者が RoamSwitch 自身を止めたり、設定を書き換えたりしたときに、そのすべてを見つけられるか。上の出力にあるとおり、デーモンを止められると、自分では知らせられない部分があります
  • 点検コマンドで「失敗はありません」と出ても、攻撃を受けていない証明にはなりません。意味は、動かせる条件がそろっている、ということだけです
確認問題

detection-coverage で「見ていない」と表示された手法は、何を意味しますか

解説を見る

「見ていない」は、その手法が製品の検知の範囲の外にある、という意味です。攻撃があるかどうかとは関係がありません。ガードが止まっている場合は、別の欄(「対応するガードが止まっている項目」)に数えます。

#次に学ぶこと

扱う機能
確認した内容

2026-11-03に確認しました。対象は Linux 1.17.30 です。Ubuntu 26.04 の Server Edition で、記載のコマンドを実行

コマンドの出力は、製品の版や環境によって変わります。違いが出たら、まず製品の版を確かめてください。